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a faint

第57章 A-31


A’s eye

「タチの悪いドラッグより……」

顔を顰(しか)めながら

「……タチが悪い」

そう云うコトをしゃあしゃあと宣(のたま)うヤツの方が タチが悪いってのが世の習いだ。

態(わざ)とらしく指折りながら

「ニコチン ギャンブル アルコール ロウニャクナンニョヲ ヨリドリミドリ……」

”諸悪の根源はオマエだ” と匂わせんばかりに重く座った眼は 俺を睨んだまま

「……ったくよぉ」

輩(やから)みたくほざいて 立てた片膝に左肘を寄っ掛からせ その手には切子硝子のアンティークなぐい呑み。

”幻の何とか” と御大層な名の冷酒は手土産だったはず。

その殆どを 水分補給と云わんばかりに胃へ収めたカズの身体は ユラユラ左右に危なっかしくブレて

「始末に負えねぇ」

濁った溜め息を吐いた挙句 テーブルを拳固でど突いては

「……オマエだよ オマエ」

捨て鉢な言いがかり。

ビシッと指さしてきた人差し指を ネロンと舌で掬い取って 口に含めばブルッと小刻みに身体を震わせる。

そこには何の意味もなく 単なる無条件反射。

一瞬で引き抜かれた唾液塗(まみ)れの指に 顎先を掬われたのも一瞬のコト。

上向いた口に 酒臭い口唇が重なって 押し付けられた歯がぶつかる鈍い音が 後頭部あたりを痺(しび)れさせた。

夜情事 計算尽く 夜事情 打算的

目も 耳も 口も 腕も 動きを封じられ 鼻をひくつかせ 嗅いだ匂いに その存在を確かめ繋がる。

五感も 体勢も 獣じみた非量産的活動。

コイツにとって都合のいいコトは オレにとって気持ちのいいコト。

誘われ流されてしまうオレと 誘っても流してしまうコイツ。

誘い誘われ ふりふられ。

「刺されたい?」…『殺してやろうか?』

野蛮な思考回路。

「絞めてやろうか?」…『殺されたい?』

物騒な論理帰結。

生産性も 量産性もなく ただあるのは共感 もとい 狂感だったり。

籤(くじ)を引けば 屑(くず)を引いて 挫(くじ)けて いじけて 快感 実感 笑止千万 。

下唇を 不満げな子供みたいに突き出し あかんべーと仕返した。

奈落の底まで真っ逆さま 堕ちに堕ちて まさに滑落 滑稽。

続きは次回の講釈で。

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