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a faint

第23章 A-13


A’s eye

ようやく作業を終えて 空き箱を一つ二つと潰している二宮さんから チラ見されている様な気がして
手を振ってアクション起こしてみるンだけれど 全くと言っていい程 目が合わない。

ワザと素気なくしてるのが小憎らしい。

俺が此処に居ることを知ってるクセに ワザと素っ気なくしてるのが 小憎らしい。

ポテトも空っぽ、氷だけがやたらガシャガシャしてるカップの中身をストローで吸い上げても 炭酸風味の水が少し上がってくるだけ。

見渡せば狭い店内も 段々混み出してきて ざわついてる。

そろそろ潮時かな とガラス越しの向こうに目をやっても ゴミ袋に入った空き缶を ボトルカーの上へ放り上げたり 台車を折り畳んでる忙しそうな二宮さんは一瞥もくれない。

愛想の一欠片くらい見せてくれたって…バチが当たるもんじゃなし。

ストローの吸い口をみっともなくガジガジ噛み潰しながら ”こっち見やがれ” なんて念を送ってみても梨の礫(つぶて)。

”彼女になれって誘うから……”

求められて嬉しかったから

”………誘いに乗ってやったのに”

こうやって口を尖らせ 自分の立ち位置を少しでも優位にして 大人ぶろうとするのが まだまだ子供だと思うし そんな俺のお子様的思考なんて きっと見透かされてる。

そんな諸々を踏まえて ワザと知らん振りして るンだ アノ人は きっと。

そう云うトコも込みこみで それが "二宮さん" なんだって分かってても 何だかなぁ。

ようやく作業が終わったのか グッと伸ばした背中と腰を ポンポンと叩いていた手が さり気無く尻ポケットにスッと突っ込まれた。

それは

『其処で待ってろ』

LINEもメールも滅多にしてくれない二宮さんからのアナログな合図。

浮かしかけたケツを も一回 固い椅子へ落ち着けなおして スマホの画面をタップ

『りょーかいっ』

打ち込んで 送信すれば すでに運転席に乗り込んでる二宮さんが スマホを取り出したのが遠目に見えた。

少しは こっちを意識してくれるかも? なんて そんな甘っちょろい期待を あっさり無下に出来るアノ人は 案の定 視線を1ミリも寄越さず 素知らぬ顔。

さっさとエンジンを始動させ 右へウィンカーを出すと 加速したボトルカーの赤いテールランプは あっという間に向こうへ と遠ざかっていった。

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