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a faint

第39章 N-17


N’s eye

昔も 今も あるところに 一人のオトコと もう一人のオトコがおりました。





ハラリと被る前髪の下に 手を潜(くぐ)らせ ソっと上へと掻き上げる。

お出ましの綺麗な弧を描く額に ピンと張る肌へ キスを落とす。

瞑っていた目蓋が小刻みに痙攣して くっきりと型のついた二重の縁が持ち上がる。

虹彩の真ん中の 黒くて丸い瞳孔。

ユラユラと視点を彷徨(さまよ)わせる眼球の あまりの艶々しさに ドス黒い狂気が反応する。

ズブリと指を突っ込み 抉(えぐ)り出したくなるのを 既(すんで)の所で堪(こら)える。

「そうすればいいのに……」

胸裏を読んだような呟き。

その口を見返す俺の指を一本、手に取ると 吸うように其れを口唇で食(は)み

「………オマエになら 何されたって いい」

えげつなく最凶の殺し文句の投下に 目眩を覚えるどころか 歓喜に酩酊し 吐き気を催しそうだ。

クルリとそっぽ向く背中は つれなく 素気無(すげな)い 天邪鬼。

深夜ノ罪事(つみごと) 蜜夜ノ睦事(むつみごと)

密かに 潜んで 冷やかに 秘めて

勃ッテ 穿(うが)ッテ 打ッテ 放ッテ

”俺ヲ良クシテ… 俺ニ欲シテ…”

囁く甘言を 甘受して 細やかな甘露を 甘飲する。

あられなく 淫らに しどけなく 露(あらわ)で しとどに 濡れて あどけなく 乱れる。

鍛エタ腹ニ 散ッタセイエキ。

青息吐息の俺に

「……まだ欲しい?」

桃色吐息なオマエが

「……また欲しい?」

言うな 試すな そんな愚問。

身の内から欲するこの狂おしく愛しい情感を糧に オマエの身体も オマエの心も オマエの全て何もかも なりふり構わず平らげてやる

離しはしない 離せやしない 永遠の眠りにつくその時まで 俺の覚悟を思い知れ。





今日も 明日も そんな二人は いつまでも いつまでも きっと多分幸せなんでしょう。


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