a faint
第41章 A-23
A’s eye
『ガシャン』
これは ボトルカーのスライドドアを引いた音で
『……ゴーロゴロ ゴロゴロ』
炭酸飲料やら缶コーヒーの詰まったダンボール箱が 山と積まれた台車を押してる音。
その後を
『ザリザリザリ』
足の裏を擦るようにして ついていくのは二宮さんの靴音。
『カシャン ガラガラ カシャン ガラガラ』
投入した缶の分だけ 音が転がってく。
見ていなくったって それくらい分かるようになってしまった自分へ
”……どんだけ二宮さんに 貼りついてンだよ 俺”
独り言 兼 独りツッコミ。
17時半過ぎ 駅前広場のバスターミナル。
さっきバスが出ていったばかりの4番乗り場には あと20分 バスは来ない。
待ち合いのベンチには 次の乗客の姿はまだ無いのを いいことに一旦は真ん中へ陣取ってみたけれど 何となくケツの座りが悪くて 端っこへ座り直す。
やるコトと云えば 抱えた膝頭へスマホを乗っけて チコチコとボタン操作。
ゲームを始めてみるものの 一向に身が入らないのは 仕事熱心な二宮さんのせい。
”遠くから見てるだけ” から ”ただの顔見知り” になって ようやく ”恋人” のポジションにやっとの格上げ。
なのに 俺は相変わらず 仕事に勤(いそ)しむ彼氏の背中を 遠目に眺めているばかり。
溜め息を吐くのと同時に スマホが高らかにキンコンとメッセージの通知を告げた。
先に進まないゲームを閉じて メッセージアプリをタップすれば あちこちからのお知らせに混じって 風間さんからの ”元気にしてる?” 的なメッセージが入っていた。
電車から降りてきた帰宅族が ワラワラとベンチに寄ってきたのを期に 目の端に二宮さんを捕まえてられる花時計に近い街路灯の下へ移動する。
ひんやりする支柱に背中を凭(もた)せて スマホの画面に目を落とす。
『お疲れさまです』
メッセージアプリの相手は風間さん。
一言二言 やり取りを返した後
『あのヒトの勤勉さ……なんなんでしょ(怒)』
二宮さんの同僚ってコトもあって つい愚痴ってしまう。
『エリアマネージャーに昇格したのになぁー』
トーク画面の向こうで 風間さんが苦笑してるのが目に浮かんだ。