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a faint

第43章 A-24


A’s eye

知らなかった事実を知ったのは あのインフルエンザの後。

仕事に復帰した二宮さんが 開口一番

「……母親同士が従姉妹なんだよ」

「え?」

風間さんとは小さい頃に わりと行き来があったらしい。

「…そうなの?」

確かに 俺を一目見た風間さんが ”あ!”みたいな顔をしたコトが微妙に引っ掛かってた。

”このヒト 俺を知ってる?”

単なる一同僚だと云う間柄なら 二宮さんは ”俺” の話をするはずは100%ない。

”だったら どんな関係?”

言いたいのに 言えなくて 聞きたいのに 聞けないもどかしさに ただそっぽ向くしか出来なかった。

「気にするようなコトは 何も無い」

頭をポンポンと叩かれ 拗ねてた自分が急にこっ恥ずかしくなったのを覚えてる。

その 又従兄弟の風間さん曰く

『マネージャー自ら 率先して配送に出るんだから』

メッセージに ウンウン頷きながら

『営業所で事務方に専念してれば良いのにね』

画面からチロと視線だけ上げて 二宮さんを確認する。

忙(せわ)しく働く後ろ姿に溜め息一つ吐いたら

『勤勉な彼氏を持つと大変だな 青少年(笑)』

”彼氏”って文字に一瞬で顔が火照る。

照れ隠しに べぇーと舌を出した途端に ここが駅前だったと思い出して 慌てて舌を引っ込める。

続けざまに ”頑張ってください” と文字の付いた太っちょなペンギンのスタンプと『FIGHT!』のメッセージが送られてきた。

思わず クスッと笑ったと同時に スマホが後ろから取り上げられ

「あっ!」

振り返るとムスッとした顔の二宮さん。

ちゃっちゃと何かを打って ポイと返されたスマホの画面には

『五月蝿い 邪魔』

風間さんへ送信されていた。

すぐさま ピコンと音がして

『(苦笑)』

それだけ返ってきた。

「俺がいない間に……」

ジトと睨(ねめ)めつける目が

”何やってんの”

疚(やま)しいコトをしてるワケじゃないし そんな風に咎められる理由はないから 口唇を尖らせて

「別に…」

ちょっと不貞てみせれば 呆れたような目で見返され ふと気づいた。

”もしかしたら 二宮さん……”

「……妬い 「言うな!」」

恐ろしくドスの効いた低い声と据わった目に 言おうとした言葉の先を制された。






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