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Kissシリーズ

第9章 ヘタレとのキス

イライラする。

「ん~っと…」

目の前の同級生の男は、一枚の紙と睨めっこ。

「…まだ?」

「あっ、あとちょっと…」

そう言ってもう三十分は経っている気がする。

相変わらずトロい。

国語のテストで赤点を取り、追試のプリントと格闘して早一時間。

国語の担当者である私は、コイツのプリントを国語教師に提出しないことには帰れない。

誰もいない放課後の教室には、アイツの唸り声しか聞こえない。

もうすでに他の生徒達は、私にプリントを渡して帰った。

…三十分も前に。

アイツの前の席に移動して、追試の用紙を見た。

「うげ…」

前にやったテストそのままなのに、何でこんなに間違えるんだろう?

これじゃあギリギリ合格点だ。

…まあ合格なら良いか。

「『うげっ』って何だよ」

「そのまんま。まあ…良いんじゃない?」

投げやりに言って、手に持った用紙をパラパラ見た。

国語が得意なので担当になったのだが、コイツは昔っから国語が苦手だ。

コイツとは小学生からの付き合い。

実に十年近い。

…腐れ縁だな。
サバサバしている私と、トロトロしているコイツとは何かと一緒にされやすい。

二人セットって何だよ? こんなトロいのと一生はいたくはない。

コイツだってそう思っている。

口うるさく、女らしくない私のことなんて、苦手に決まっている。

なのに何かと一緒にいてしまうのは、やっぱり腐れ縁だろう。

「ん~っと、う~んと」

しかし…何故選択問題で悩む?

問題をちゃんと理解していれば、解けるのに…。

「ねぇ、ちゃんと復習した? 私の答案、貸してあげたじゃない」

ほぼ満点だった私の答案用紙を、復習するコイツの為に貸した。

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