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Kissシリーズ

第27章 夏祭りのキス

「信じらんないっ!」

「オレだって驚いてる!」

二人でぎゃあぎゃあ言いながら、人ごみの中を歩く。

「もうみんなして、どこに行っちゃったのよぉ」

「アイツら…。ケータイも通じないし、どこにいるんだよ」

二人してキョロキョロと周囲を見回す。

けれど目当ての人達の姿は全然見えない。

「ううっ…。はぐれた時に行く場所、決めておけば良かった」

「だな。でもいきなりはぐれるなんて、思わなかった」

今日は近所の神社で行われる夏祭り。

クラスで仲の良い友達と、遊びに来ていた。

なのに…アタシとコイツを残して、みんなしてどっかに行っちゃった!

ケータイは通じないし、出店の所を見て回ってもどこにもいない。

「もうっ…花火、はじまっちゃう」

「もしかしたら、そこにいるかもな。行ってみるか?」

「そうね。先に行ってるかも」

方向を変えようとして、アタシは…。

「きゃっ!」

つまづいた。

「おっおい!」

けれど倒れる前に、アイツに支えられてセーフ。

「あっありがと」

「浴衣じゃ歩きにくいよな」

「うん…。せっかく今日の為に着て来たのに」

今日の日の為に、女の子だけで浴衣を買った。

オレンジ色の生地に、黄色の花模様。

普段は黒とか茶色しか着ないアタシは、最初は恥ずかしかった。

けれどみんなして「可愛い♪」って言ってくれて、嬉しかったのに…。

「うっ…」

ここにはいない友達の顔が頭に浮かんで、思わず涙が出そうになった。

「おっおいおい。何も泣くことないだろ?」

「だってぇ」

クラスでも仲が良い友達。

男とか女とか関わらず、楽しくやってきた。

いつも大人数で遊んでいたのに、今じゃ二人きり…。

「ああもう!」

いきなりアタシの手を掴んで、アイツは歩き出した。

「えっ、ちょっと!」

「花火見る所に行けば、誰かしらいるだろうから! 今はオレでガマンしろっ!」

がっガマンって…。

でも手は離さないまま、花火を見る所まで来た。

土手の上で、穴場だった。

けれど…。

「いない、わね」

「んっとにどこにいるんだか」

そう言って空いている手で、ケータイを操作する。

けれど繋がらないみたい。

「…もうここで待ってましょ」

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