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Kissシリーズ

第32章 冷静なキス

わたしが彼と何かをする時、いつもわたしの方から言い出す。

「ねぇ、キスして」

「ああ」

彼は優しくわたしを抱き締めて、ゆっくりと甘いキスをしてくれる。

「んっ…。次はぎゅっと抱き締めて」

「分かった」

そしてわたしが言った通り、ぎゅっと抱き締めてくれる。

するとわたしの心の中は、春のようにポカポカとあたたかくなる。

それはわたしが彼を好きな、何よりの証拠。

だけど…彼の心が分からない。

高校に入学してすぐ、わたしと彼は学級委員長に選ばれた。

理由はお互い、良い成績で入学したからだ。

でもその時は特に意識なんてしていなかった。

けれど一緒に過ごしているうちに、もっと一緒にいたいと思った。

だから二年に上がる前、つまり学級委員長を終わる前に、彼にわたしから告白した。

「あの、ね。わたし、貴方のことが好きなの。恋人になってくれる?」

…今思い出しても恥ずかしい。

委員長の仕事があるからと、誰もいない放課後の教室に彼と残っている時に告げた。

彼はあまり動じない性格で、表情もあまりその…変わらない。

「―いいよ。恋人になろう」

と、返事も無表情で、全く動じず答えてくれた。

それからと言うもの、一緒にお昼を食べたり帰ったり、または放課後や休日にどこか出掛けるのも、わたしから言い出す。

電話やメールだって、わたしからしなきゃ彼はしてくれない。

二年に上がった今も、わたしと彼は同じクラスで、そして学級委員長をしていた。

なので時々、誰もいない教室でこっそりキスをせがんだりする。

理由は彼が少しでも困ったり、照れたりしたところを見たいから。

…けれど相変わらず淡々と、わたしの言うことを聞いてくれた。

何だか肩透かしも良いところだなぁ。

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