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Kissシリーズ

第32章 冷静なキス

けれどこうやって抱き締めてもらっていると、胸がきゅんきゅんしてくる。

一緒にいるのに、どこか切ない気持ちは、彼にしか感じられない特別な感情。

だからわたしは彼が好き。

けど彼は…本当にわたしが好きなんだろうか?

いつも冷静で、感情を取り乱したりしない。

どこへ行っても、何をしても、感情や表情が動いているのはわたしだけの気がする。

なので顔を上げ、至近距離で彼の眼を見つめる。

「ねぇ、わたしのこと、本当に好き?」

「好きだよ」

…やっぱり淡々と返された。

「それは…ちゃんと恋人としての、好き?」

「じゃなきゃ、恋人にならない」

ごもっとも。

おかしなことを言っているのは、絶対にわたしの方だって分かっているのに…。

「どうした? 何か不安なのか?」

「う~ん。…いや、わたしの方がおかしいのよ。幸せすぎて、不安っていう感じ?」

そうだ。コレは幸せ過ぎるから、感じてしまうこと。

だって彼はわたし一筋だし、周囲の人だって祝福してくれる。

大事にされていることだって分かるんだけど…。

「ねっ、ねぇ。イヤなことはイヤって言ってよ?」
「イヤなことって?」

「例えばその…デートコースで行きたくない場所とか」

「別にない」

「わたしが言い出したことに不満がある時とか…」

「特にない」

…否定されるのは嬉しいことのはずなのに、何で気持ちは沈んでいくんだろう?

なのでじぃ~っと彼を見つめる。

「じゃああなたって何がイヤなの?」

「キミが他の男に取られるのがイヤだ」

ボッ!と全身が一気に熱くなった!

そっそう言うことを真顔で言われると、心臓に悪い…。

「それ以外のことだったら、特に何も不満はないよ」

「ほっホントに?」

「うん。それにキミと俺の趣味って近いから。俺の行きたい所はキミの行きたい所だし、したいことは俺もしたいことだから」

「…こういう放課後、誰もいない教室でキスすることも?」

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