
にゃんこは虎の夢を見る
第1章 カッコいいには程遠い?
ー…にのが、グレた
柔らかい触り心地の良かった黒髪が、どう見てもパサパサな茶色ってか金髪に変わっている
どうだ、と言わんばかりにどや顔をして、今、俺の目の前に立っているけど
まだ真新しいお揃いのブレザーは、にのの身体には少し大きくて
元々小柄で華奢なのもあって、はっきり言って七五三……、いやこれは殴られるから言わないけど
…グレた、と言うのは違うか
きっと本人からしたら「イケてる」つもりなんだろう
所謂「高校デビュー」と言うものなんだと思う
小、中とひたすら「可愛い」と称され、本人の望む「男らしくてカッコいい」とは一度たりとも言われなかった
ひたすら小動物の如く、可愛がられ弄られ捲ってたにのは、春休みに入った途端
《俺はカッコいい男になる!!》とどこぞの海賊マンガをもじったように仁王立ちで宣言し「楽しみにしとけよっ」と、俺の前から姿を隠した
どれだけメールや電話をしても、入学式まで会わない!と一蹴され
ようやく顔が見れたのは、この出で立ちのにのだった
「…にの?」
「どうよ、なかなかイイ感じだろ!」
うん。イイ感じ、ではあるね
でもそれは、にのの差すところの「イイ感じ」とは違うと思うよ
