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キミの事を取り戻せるなら

第3章 助けてほしいのに

部屋には
マネージャー
俺達9人
担当医
担当看護師

マネージャー「彼女、橘美花さんは、ずっと1人で生きて来たんです。」
「えっ!?」
マネージャー「彼女に初めて会ったのは、人づてにダンスのうまい女の子がいるからって会いに行ったんです。とっても笑顔が可愛くて愛嬌のある気さくな性格で、プロにならないかって何度も誘ったんですけど行く度に断られていました。仕事も生活の為だと言って、いくつも掛け持ちしていました。でも何度も足を運んでくれる僕に、とびきりの笑顔で『仕方がないな。』って事務所に来てもらってサバイバーのレッスンを見学した彼女が『こんな凄いダンスする人達、見たの初めて!!楽しそう!!』って言ってくれたんです。」
ダイ「そんな事、言ってくれたんだ。」
マネージャー「それで、うちの事務所に入らない?って聞いたら『入りたいけどレッスン料ないから、もう少し働いてから。』って言われたんです。ちゃんとしてる子だったから無理強い出来なかったんですよね。けど数日経って彼女から連絡があって『レッスンには行けません。ごめんなさい。』って、僕はいてもたってもいられなくて彼女に会いに行ったら、仕事を1つ辞めてしまったから次を見つけるまで大変だからって。一番長く働いていたところを辞めるなんて、おかしいって思って彼女に会いに行きました。泣きながら『ごめんなさい。』しか言ってくれませんでした。ただ『私に家族がいないから仕方ないんです。』って一言呟いたのが気がかりで。」
お茶を一口飲んで
マネージャー「彼女の家族は、中学の卒業式に向かう途中、居眠り運転の車に追突されて即死だったそうです。」
声を震わせて
マネージャー「だから彼女は自分自身に暗示を掛けるようになったんです。何度キミのせいじゃないよって言っても、暗示を掛けるのは辞めなかったんです。だから僕とサバイバーのメンバー達だ
ったら、暗示という呪縛が解けるんじゃないかって『メンバーさん達の邪魔になるのは、イヤ。』と何度も断られたんですが、どうしてもって僕も引かなかったんです。だけど彼女が『仕方がないな。』って笑って承諾してくれました。僕は、その呪縛から解放してあげたいんです。」

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