テキストサイズ

俺の男に手を出すな

第1章 お不動さま

【智side】


深夜、翔君の苦しそうなうなり声で目が覚めた。
頭で考えるより先に、オイラの体が勝手に反応して飛び起きる。

首の後ろから両耳の脇辺りにかけて、ピリピリ、チリチリする感覚。

翔君はうなされながら、顔の前で何かを払いのけるように腕を動かしていた。

ベッドの脇、翔君が寝てる側のところに、何かがいるのがオイラにもわかる。

あ~、も~、誰だ?
面倒くせぇな。





オイラ、見えないけど、存在はわかる。
これは、生きてるヤツだな。

一応、説得できるかもしれないから、話しかけてみるか。

悪気がないかもしれないし、無自覚なのかもしれない。
出来れば手荒にしたくなかった。


「おい、勝手に来て何やってんだ
そういうの、押し売りと同じだぞ
嫌われてもいいのか?」


見えない(ってゆうか、見たくないからそっちのスイッチは切っている)から分からないが、向こうがオイラを小馬鹿にしているのは伝わってきた。

鼻でせせら笑うような感じが漂ってる。


オイラ、ぼーっとしてるから、舐 められるんだよなぁ。

怖がると思ったか?

あいにくだけど、こっちは慣れてんだ。
アンタみたいなのは、オイラ全然平気なんだよね。




不動明王の印を組み、見えない相手の目を睨んでやった。

これ、印は違うけど、この間の映画でもやってたし、PVでも振りに取り入れたから、コイツにはオイラがふざけてるように見えたのかもしんない。

知らないって、怖ぇな。

「今ならまだ、見逃してやるけど?」

自分の内側から炎が躍り上がってくるイメージを作る。

あ、駄目だコイツ。
人を見下して喜ぶタイプだ。

翔君は礼儀正しく相手の話に付き合っちゃうから、親切にされて勘違いしたんだろうなぁ。
よくある話だ。





悪いけど、帰ってもらうよ。
そんで、二度と翔君に近づくな。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ