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俺の男に手を出すな

第2章 大天使ガブリエル

【智side】

次々に映像が出て来た。

彼女が結婚式を挙げた時の姿なんだろう。
今着てるのと同じドレスで鏡の前に立ち、嬉しそうに笑ってる。
披露宴に翔君が居る。
新郎と翔君が笑顔で話してる。

「旦那さんと翔君が友達なんだね?」

彼女は大きく頷いた。
また映像が出て来る。

大学?学校で、まだ若い翔君と旦那さんが一緒に居る。
大人の姿に変わって、どこかの店で、数人で飲んでる姿。
翔君が、旦那さんの腕を叩いて何か笑って言ってる。

「仲が良かったんだね。
これからも仲良くして欲しいってこと?」

また、彼女が大きく頷いて、深く頭を下げた。
きっと、自分が亡くなった後の旦那さんのことを翔君に頼みたいのだろう。

「何かアナタだってわかるような目印になることない?」

彼女は自分の頬にある黒子を指さして示した後に、ブーケから百合の花を一輪抜いた。

それから、また、深くお辞儀をした。

「わかった」





わかった、と答えた直後、突然、目が覚めた。
こういう夢の時はいつもそうだ。
チャンネルが変わるみたいに、急にアッチからコッチへ移動する。

「おはよう」

オイラの隣で、翔君が笑って言った。
ああ、そっか。
翔君がもう起きてたから、彼女は夢に入れなかったんだ。

「今、寝言、言ったよ?」

肘枕をついた翔君が、空いてる手でオイラの肩に布団を掛けてくれた。
裸で眠ると、朝は、もう寒い。

「…うん…夢見た…」

「どんな夢?」

「…うん…」

オイラは何から伝えれば良いか考える。
結局のところ、俺にとって大切なのは、目の前に居るこの男だけで。
何て言えば傷つかないか、そのことばかりが気になる。

人間はみんな、自分勝手だ。
自分が愛する者のことしか、考えない。

「ん?怖い夢だった?
悪い夢は誰かに話した方が良いんだってよ?」

愛する者を残して先立つことになってしまったら。
オイラだってきっと、頼める人には頼みに行く。
自分が去った後、どうかよろしくお願いします、って。

「…ん、どうだろ…」

でも、オイラは、翔君を置いていったりしない。
絶対に。

強く思いながら体の向きを変えると、腕を伸ばして翔君の頭を胸に抱いた。

触れる肌の体温が、ただ愛しかった。

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