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俺の男に手を出すな

第3章 ガネーシャ

【智side】

「ただいま~」

帰宅した翔君を玄関まで出迎えに行くと、妙な気配がした。
翔君は、出かける時には持っていなかった紙袋を、両手に下げている。

片方の袋は、おしゃれな感じの柄が入ってて、中からリボンのかかった包みがのぞいている。
現場で、何か、頂き物でもしたんだろう。

もう片方の袋は使い古した感じで皺が寄ってる。
茶色の無地で、よく見るタイプのやつ。

なんだ、これ?

「ん!」

翔君が唇を尖らせて催促してたけど、無視して、取り敢えず荷物を受け取った。
シューズボックスの上に置いて、ごそごそ開け始めると、

「ん~~~~!」

翔君は焦れて足をパタパタとさせる。

はいはい、わかった。
子供か、おまえは。

肩から首に腕を回して、ちゅっ、と キ ス をする。

「おかえり」

視線を合わせて笑いかけたら、翔君も嬉しそうに笑い返してきた。
今日もオイラの男は可愛いな。

で、紙袋は?

体を離そうとしたら、引き寄せられて口に吸いつかれた。

「ンッ!ンン…ん…ッ」

だから、帰って来るなり毎回、濃ゆい キ ス をするのはやめろ(笑)。


翔君がシャワーを浴びているうちに、失礼して紙袋を開けたところ、出て来たのはガネーシャ像だった。
人間の体に象の頭を持つ、インドの神様だ。

10cmくらいの高さで掌に乗る大きさだけど、鉄製でずっしりと重い。
目に愛嬌があって、たれ目なんだけど、目尻がちょっと持ち上がってる。
ちょっと、エッチくさい表情が、いかにもインド製って感じ。

リビングのソファに座って、テーブルの上に置いたそれを、しばらく眺めてみる。

ん~、オイラ、ガネーシャ様は好きだけどさ。

これ、中に入ってるなぁ。

しかも、なんとなくご機嫌ナナメっぽくね?

外国の神様は、ちょっと癖があるというか、意思の疎通が難しいんだよね。





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