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狂恋 ~狂おしい恋に身を焦がす~【BL】

第1章 10年ぶりの再会

オレはその後、携帯電話を変え、番号もメアドも全て変えた。

そのことを両親以外には誰にも告げなかった。

利人にだけは、知られたくなかったから。

そして大学を卒業した後、日本に戻って来た。

けれど地元には帰らず、遠いこの土地に来て就職した。

だけどその間ずっと、利人はオレのことを探していた。

分かっていながら、オレは連絡しなかった。

…終わらせてほしかったんだ。

恋人なんて関係は。

いや、終わってほしかったんだ。オレが。

「…十年前、お前に何も言わず去ったことはオレが悪かった」

けれど何も言わずに去ったのは、卑怯としか言い様がないことも分かっていた。

「お前のことが嫌いになったとかじゃなかったんだ。だから真正面から別れは告げられなかった」

だけど今なら言える。

「終わりにしよう。若さゆえの過ち、暴走だったと思ってさ」

「思えるわけがないでしょうっ!」

利人は声を荒げ、立ち上がった。

そしてオレの肩を掴み、真正面からオレの眼を見る。

「どうして本当のことを言ってくれないんです? あなたは嘘ばかりついている」

「それ、は…」

言えない、からだ。

お前と恋人関係になることを選んだのは興味本位からであって、真剣には考えていなかったことを。

そしてセックスさえも、興味があったからしたなんてこと…口がさけても言えやしない。

最低だった。

本気で恋愛をしていたとは、言えない。

けれど利人と共に過ごす時間が増えるうちに、だんだんと本気になっていった。

利人が本気でオレのことを愛してくれているのが分かってきた。

だからこそ、罪悪感ができてしまった。

最初から本気で恋人になることを考えていなかった自分がイヤで、自分自身を嫌いになっていた。

利人に惹かれていく強さで、自分のことを嫌いになった。

その気持ちに押し潰されそうになって、ガマンができなくなって、利人から逃げた。

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