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狂恋 ~狂おしい恋に身を焦がす~【BL】

第1章 10年ぶりの再会

そんなオレの気持ちを知られたくなくて、あえて黙って消えた。

今もその気持ちがあるんだから、十年経ってもオレは成長していない。

「利人のことは…今でも愛してる」

オレは真っ直ぐに利人の眼を見て言った。

「っ! 雅夜…」

利人の動揺が、掴まれている肩から伝わる。

「けれどお前のこと、同じ強さで怖いとも思っているんだ」

「怖い? 私が?」

「はっきり言ってしまえば、愛が重過ぎるんだ。オレには耐え切れない」

「それが…本音、ですか?」

「…ああ。だから何にも言えなかった」

コレも本音だ。

利人がオレを深く愛してくるたびに、そして求めてくるたびに、恐ろしさを感じていた。

それはきっと、罪悪感から感じたことだろうけど…コレは言えない。

「…だけど今でも私を愛してる。それは十年間、変わらなかったんですよね?」

「それはっ…!」

そう、だけど…。

「それじゃあ恋人を止めることはないですよ」

「だからそれじゃダメなんだっ!」

「何がダメなんですか? お互い愛し合っているのなら、何の心配も不安もないはずです」

利人の強い意志がこもった声に、思わず甘えてしまいそうになる。

だけど…甘えちゃダメだ。

十年前と、同じことを繰り返してはいけない。

「オレは…いや、オレがダメなんだ」

「雅夜の何がダメなんです?」

利人は両手をオレの肩から頬に移動させ、間近で優しく微笑んで見せた。

「私は雅夜の全てを愛しています。弱さも、ズルさも、ね」

「利人…。お前、まさか…!」

「ええ、知っていましたよ。雅夜がはじめは私のことを、本気で愛していなかったことを」

その言葉に思わず眼が丸くなる。

「知ってて付き合ってたのか?」

「一緒にいれば愛してくれることが分かっていたからこそ、付き合っていたんですよ。事実、雅夜は私のことを愛してくれたじゃないですか」

何てこった…!

利人には全て見透かされていたのか。

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