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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第23章 翌朝


 まったくっ! …… 今日は、散々だった。

 伊達に記憶がないだけに、
 妄想だけが頭の中で全開になり。
 何の関係もない男子との何気ないやり取りや
 触れ合いだけで、勝手に体が過剰反応してしまって
 皆んなから凄く変な目で見られたり。

 出来るだけ男子達との関わりを避けようって
 していても、それはどだい無理なハナシで。

 昼休みのチャイムが鳴った頃には
 いつもの数倍疲労困憊していた。
 
 
 お昼はいつもの学食じゃなく、
 購買でパンと牛乳を買って屋上で食べながら
 数学の宿題を片付ける。
 
 

「―― いやぁ、あやちゃんてば真面目ねぇ」


 ノートにペンを走らせる私を見て
 美和ちゃんが微笑んだ。


「ううん、そんな事ないよ。
 中間の数学、赤点取っちゃったから、
 今度追試なんだぁ」
 
「あぁ、そうだったの。
 私もこの前のはかなりヤバかったなぁ」

「「 (ΦωΦ)フフフ……」」


 2人、顔を見合わせ何となく笑ってしまう。

 「あぁ、あんた達 ――」という、
 声に顔を向ければ。

 それは用務員の小父さんで。

 
「確か、3-Sの園芸係りだったよね?」

「「はい」」

「西嶋先生が探してたよ」 


「あ、そうですか。ありがとうございます。
 これから伺ってみます」


  と、美和ちゃん。


「私行くけど?」

「ううん、あやちゃんは勉強続けてて」


 と、美和ちゃんが足早に去って行くと、
 入れ違いに各務さんが昇降口から姿を現す ――。
 
 瞬時に私の表情が強張ったのを彼は
 見逃さなかった。


「―― 何だよ」

「べ、別に、何でもありません」

「……それ何?」

「は?」

「それ」


 彼の視線を辿ると、私の膝の上にある学校の
 テキストに注がれていた。


「あ、あぁ ―― 数学の宿題です、けど」

「あ、そっか、そーいやお前学生だったもんな、
 忘れてた」
 
「それ、私が見かけより老けてるって意味ですか」

「ま、そう突っかかってくるなよ」


 と、彼は私のすぐ真横に腰を下ろした。

 とっさに少し距離をとる、私。

 わざとしているのか? 
 彼はその距離をさらに縮めてきた。

 私は更に距離をとる。

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