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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第23章 翌朝


「……お前さ、
 2日前からみょーに俺の事避けてねぇ?」


 何か、彼の私を見る視線が変わってきた
 ような気がして、急に心臓がドキドキし始めた。
 
 ちょ、やだ、何意識してんのよ……。

 
「き、気のせいでしょ」

「……ひとつ、いい事教えてやろーか?」


 それまで視線を泳がせてばかりいた私が、初めて
 彼を見た時。


 「もーうっ、竜二さんったらまたタマゴちゃん
  イジメてたのー」

 と現れたのは、
 教室にいる時とはまとっている雰囲気が全然違う
 女子・神宮寺 愛奈。
 
 実は彼女、かの神宮寺ホールディングス総帥の
 1人娘で、各務先生が育休代替教師として赴任して
 来た時から”親衛隊”を作るほど彼に夢中なのだ。
 
 親の権力を使って彼とお見合いしたって噂もある。


 神宮寺さんはつかつかと私達の方へやって来て、
 おもむろに各務さんの膝の上へ腰を下ろした。
 (お姫様抱っこお座りバージョン)

 私は” げげっ、何、この女??” って、
 内心ドン引き。

 けど各務さんは、わざと見せつけるが如く、
 彼女の腰を軽くホールドしながら言葉を繋ぐ。


「どうしました? 確か今日は早退けすると
 おっしゃっていましたが」
 
「あら、竜二さんが私(わたくし)の事を気にかけて
 下さるなんて嬉しいわ」
 

 この2人の雰囲気はどう見てもただの知り合いには
 見えなかったので、私は手早くテキストをまとめ、
 腰を浮かしかけた。

 でも、その私の襟首を各務さんがむんずと掴んで。
 
 
「今夜、アクエリオンで待ってる」

「追試が近いのでお断りします」

「この俺様が直々に教えてやるよ。
 幸い数学は得意中の得意だ」

「いいえぇ~、各務さんだってお忙しいのに
 そんな……」

「分かったな。必ず来いよ」


 と言って襟首を掴んでいた手は離してくれた。


「相変わらず強引ねぇ」


 って、神宮寺さんは甘えモード全開。

 あぁ、アホらし。


 『 ―― 分かったな。必ず来いよ 』


 絶対、絶対に、行くもんか!

 心の中で各務に向かって思い切りあっかんべーを
 した。

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