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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第24章 災難は続く ――


 あれから ――。

 応接室を後にして、
 一体どうやって港南寮へ戻って来たのか?
 よく覚えていない。

 それだけ、あんな場所で各務さんに唇を奪われた
 事実は衝撃的で……といっても、
 彼の証言が嘘でないなら、もう私はあいつと
 行き着く所までイッてしまっているのだが。
 
 あの夜の記憶が全くない私にとっては、
 やっぱりさっきのキスの方が何十倍もショックで
 寮室へ帰っても、
 利沙がやって来て電気を点けてくれるまで
 共有エリアのカウチソファーで呆然と
 座っていたんだ。


 「どうしたの? 何かあった?」って聞かれ。
 「別に何もないよ」なんて、答えても。
 この時の私の様子は誰が見ても普通じゃなくて、
 何かあったのは一目瞭然。

 長い付き合いの親友には最初からバレバレで……。

 私は利沙が淹れてくれたホットココアを
 飲みながら、今日学校で何があったかを
 ポツリポツリと話し始めた。


「……うちこの前アクエリオンで彼と鉢合わせた時も
 思ったんやけど……各務さんの本命はあや
 なんやないの?」

「ご冗談をっ。毎日怒鳴られまくりで、
 3-Sのいじられキャラだなんて言われてるのに」
 
「せやけど、何の興味もない女の事、
 わざわざ休みの日に普通呼びつけたりするかしら」
 
「さぁね、あいつは普通じゃないし、
 やる事なす事大体規格外だから」


 利沙には曖昧にそう言ってごまかしたけど。
   

 床に就いても、応接室でじっと覗き込まれた時の
 あいつの強い視線が脳裏にちらついて。

 ほんの一瞬触れただけのあいつの唇の感触が
 はっきり残っていて。 
 なかなか寝付けなくて、寝酒に缶ビール2本空けて
 やっと眠りについた。

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