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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第27章 特別な場所


 ドゥルルルルル ―― とふかす
 バイクのエンジン音に絢音はかなりビビっていた。
 

 (バイクって乗った事ないんだよなぁ)
 

「ほら」

「わっ」


 各務がひょいっと投げたメットをあわてて
 キャッチ。


「あぶねぇからお前はかぶってろ」

「う、うん」

「なにしてる? 手ぇ出せよ」


 特攻服姿の各務が絢音に手を差し伸べる。
 絢音は大きな各務の手を握った。
 ぐいっと引っ張られ、各務のバイクに乗せられる。
 絢音は遠慮がちに各務の特攻服の端っこをもった。
 

「バカあぶねぇだろ? しっかり掴まってろって」


 そう言って絢音の両手を自分の腹の前で
 しっかり握らせた。


「行くぞ」
「わわわっ」


 各務はバイクをスタートさせた。
 絢音は遠心力に振り落とされないように、
 ぎゅっと各務の背中にしがみつく。
 
 そんな絢音に各務はフッと微笑んだ。


「埠頭で待ち合わせしてんだ。急ぐぞ?」

「わわわっあんまりと、飛ばさないでよぉ」


 埠頭の倉庫前に何台ものバイクや車が
 たむろしている。

 そこの一角に各務と同じ特攻服姿の女性・玲子と
 学校では養護教諭の日向がいた。


「あ、竜二きた。おーい。あれ? 誰か連れてる。
 ……女だ」
 
「ええっ、まじぃ?」


 日向のひと言に玲子が身を乗り出した。

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