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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第28章 試練


 あっという間に竜二と2人きりの
 楽しい冬休みは終わり、
 週明けいつものように学校へ向かう。


 けれども教室に足を踏み入れた瞬間、 
 絢音はクラスメイト達の様子がいつもと違う事を
 感じ取った。
 
 挨拶をしても誰1人として返事をしてくれない。
 
 それどころか、絢音の方をチラチラ見ては
 ひそひそ何かを話している。


 後から来ためぐみ、反町、咲夜、蝶名林は
 いつも通り「おはよ~」と挨拶をして
 自分の席へと行った。

 他のクラスメイト達の様子に戸惑い
 戸口にぼんやり立っていると、めぐみが
 不思議そうに声をかけてきた。


「あやぁ、どうかした?」


「あ、ううん。何でもない」


 とは、言いつつも釈然としない
 気持ちで絢音は自分の席へ着いた。


 そして机の中に白い紙と引き伸ばした1枚の写真が
 入っているのに気付いた。

 絢音はその紙と写真を取り出した。

 そしてその瞬間、全身が硬直した。

 白い紙の上に黒い太字マジックで
 書かれた文字。


 『淫乱女』


 そう書かれていた。

 写真はどこかのネットカフェで隠し撮りされた
 モノで相手(男)の顔は上手い具合にぼかされて
 いるが、絢音の表情はまるで声さえ聞こえて来そうな
 くらい鮮明だ。
 ……忘れたくても忘れられない裕との情事を激写した
 モノ。

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