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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第29章 心が悲鳴をあげても


 もはや絢音には言い返す気力さえない。

 もう、限界だ。

 絢音は立ち上がると、
 フラフラした足取りで戸口へ向かい
 そのまま廊下へ出た。

 めぐみ達が心配そうに声をかけて来たけど
 絢音は構わずそのまま廊下を走り抜けた。

 その勢いのまま昇降口の下足箱で
 靴を履き替え学校から飛び出した。


 走って ―― 走って ――、

 何処か遠い処へ行ってしまいたかった。

 誰も自分の事を知らない処へ。


 とにかくもう2度と学校には戻りたくない。

 クラスメイトにも2度と会いたくない。

 ただひたすら走って走って、走り続けて、
 ようやく立ち止まった時、
 絢音は学校からは結構離れた河川敷の土手にいた。

 絢音は土手のなだらかな傾斜へ座り込んだ。

 絢音の散り散りに乱れた心とは裏腹に、
 河川敷の一帯はとてもひっそりと静まり返って
 いた。

 絢音は半ば頭を抱えるようにして泣き崩れた。


 もう、学校には行きたくない。
 毎日が辛い。苦しい……
 こんな想いをするくらいならいっそ
 ひと思いに死んでしまった方がマシだ。

 そう、死んでしまいたい……
 

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