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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第31章 明るい明日はきっと来る!

 
 面談の結果を心待ちしてる利沙へ連絡をとろうと
 した時、竜二さんから着信が入った。

 彼の声は暗く沈んでいた。


『……ごめんあや、今夜は会えない』

「……話したの?」

『あぁ……大喧嘩になったよ。ま、元々素直に認めて
 貰えるとは思っちゃいなかったが、ハードルは
 かなり高い……でもどんなに時間がかかろうと
 説得するつもりだ。待ってて欲しい』

「……」

『……待ってて、くれるよな?』


 彼の縋ってくるような声に、涙がこみ上げる。


「……OK。待ってるから、早く帰って?」

『愛してる、あや』


 私はそのまま近くの公衆トイレへ逃げ込んで、
 泣いた。
 ごめんね竜二さん……
 今の私にあなたの全てを受け止められる
 度量はありません。

 
 洗面台で顔を洗い、鏡に映った自分に向かって言う、


「しっかりしろ、和泉絢音」


 私は利沙に連絡する前に各務グループ本社へ
 電話をかけた。


『はい、株式会社各務でございます』

「社長の各務広嗣さんにお取り次ぎ願えますか」

『恐れ入りますがどういったご用件でしょう?』

「和泉とお伝え頂ければお分かりになると思います」


 『少々お待ち下さい』と機械的な返答の後、
 保留音が流れてきた。

 待つこと数分 ――


『お待たせ致しました、私各務の秘書をしております
 高田と申します』

「和泉と言います。突然で申し訳ございませんが、今日
 各務さんはお時間おありでしょうか?」

『あいにく本日はスケジュールが詰まっておりますが、
 明日の午後3時にこちらへお越し頂くお約束でも
 宜しいでしょうか?』

「はい、結構です。では、明日の午後3時に」


 あと1日こっちへ滞在する事になった。

 各務本社は京都・嵯峨野にある。
 
 電話を切って、大きく息を吐く。
  
 これでいいんだ、もう、後戻りは出来ない……。

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