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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第6章 体調不良、それは ――


「あつし ―― いつ、から……?」

「―― 落ち着いたか? お前、目ぇ真っ赤」


 あつしは、自分を見上げてる私を見て笑う。

 私は手早く涙を拭い、性懲りもなく強がりを言う。
  
   
「ちょっと、悪酔いしただけだから……」

「悪酔い ―― って、お前酒飲んでるのかよ」

「んな事あんたに関係ないでしょ」

  
 あつしは私の傍らに座った。

 何も語らず、真っ暗な空を見ている。

 何故泣いていたのか?   
 理由も聞かずに、ただ黙って傍にいてくれる。

 私も何も話さなかった。

   
「―― な、腹減らね?」
 
「へ?」

「今夜、事務所の社長ん家(ち)で鍋パーティー
 すんだけどあやねも来いよ」
 
 
 事務所の社長……?
 あ、そうだった ―― こいつ、こう見えても
 一応カリスマモデルだっけ。
 
 
 あつしは立ち上がった。
 
 
「腹がいっぱいになれば気分も上がるってもんよ」

「……そうかな」

「おぅ!」


 そんな威勢のいいあつしの声に釣られるよう、
 私はやっと重い腰を上げた。

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