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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第7章 露呈、そして話し合いの席で ――


「―― ただいま」

「おかえり」

「あ、姉ちゃん ―― 今日は早かったね」


 私は姉の様子が何となくいつもと違う事に
 気が付いた。

 困り果てたような、疲れた表情をしている。


「絢音、ちょっとこっちに座ってくれる?」


 姉ちゃんは私が帰ってくるなり、
 リビングのソファーに座らせた。



「単刀直入に聞くわ。絢音、あんた何日か前、
 結城先生の診察受けたわね」
 
「!!」 


 あぁ ――! なんて馬鹿なんだ……
 誰にも知られたくないなら、もっと気をつけるべき
 だった。
 
 姉ちゃんは、どこまで知ってるんだろう……?
  
 
「先生は守秘義務があるからって詳しい事は教えて
 くれなかった。だから、あなたから直接聞きたいの。
 面倒な事になる前に」


 彼女はまだ何も知らない。
 
 私はほっとする一方、もう、隠し事は出来ないって
 思った。


「妊娠したの?」


 私はごくりと生唾を飲み込んだ。

 ついにバレてしまった。


 隠し通すなんて、
 ただ現実逃避をしているだけだと分かっていた。

 でもイザこうやって身内の人間に
 向かい合うと、頭の中が真っ白になった。



「相手は裕くん?」


 母親に言えない事も姉ちゃんには話せた。
 
 かなり親密な交際をしていた事も知っている。


 姉ちゃんの問いかけに私は頷いた。


「彼はこの事を知ってるの?」
 
 
 私は再度頷く。
 
 
「――――」


 姉ちゃんはただ黙って私を凝視している。
 
 この件について裕が何と言ったか? を
 知りたいのだ。
 

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