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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第10章 新天地・東京へ

  
「―― あの辺りに住んでるの?」


 おっさんは運転しながら絢音に話しかける。


「ううん、あそこはバイトしてるカフェがあるの」
 
「ふ~ん、そっかぁ」


 沈黙…………

 何か喋らないと……あまり騒々しいのは嫌だけど、
 沈黙は好きじゃない。


「……おっさんは、確か……港南台で化学の
 非常勤講師してる人、だよね?」
 
 
 絢音はおっさんに問うた。

  
「……おっさん?」


 少し『間』が開いて、絢音を横目でチラリと見た。

 この反応……


「おっさん……じゃなかった?」

「……一応、今年33」


 33? 自分よりひと回り上だけど、
 まぁ、おっさんじゃあない、かな……


「あ ―― すんません」

「……あんまり見かけないけど、キミは転校生?
 こんな俺の事覚えてくれてる女子がいたなんて
 意外だ」


 えぇ、あんたはそりゃもう、色んな意味で
 インパクト大ですから。

 それから、学校の事を中心に取り留めのない話しを
 しているうち学校の正門に着いたので、
 車を出てドアを閉める前におっさんへ礼を言った。

 一応、送ってもらったんだから、礼儀はちゃんと
 しなくちゃね。


「ありがと。おっ ――、いえ、先生も 
 仕事頑張ってね」


 ドアを閉めて学校の敷地内に走り込み、
 校舎へまっしぐら。

 どうか遅刻してませんように!!

 絢音は祈る気持ちで昇降口へ飛び込んだ。

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