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オオカミは淫らな仔羊に欲情する

第10章 新天地・東京へ


 腕時計で時間を確認し、歩速を早めて歩き出した
 けど、すぐ運転手に引き止められた。
  
  
「ちょっと待って。それじゃ俺の気が収まらん。
 これで足りるか?」
 
 
 って、ポケットから取り出したむき出しの万札を
 数枚私に押し付けてきた。
  
 げっ! 何よこいつ ―― どうゆう金銭感覚
 してんの??

 たかがクリーニング代に万札出すなんて
 信じらんない。
  
  
「やっぱ足らないか……でも参ったな、あいにく今の
 持ちあわせはこれだけなんだ」
 
「って、足りる・足りないの問題以前に、本当にもう
 結構ですから」
 
「だからそうゆう訳にはいかないって ――」

「もうっ、しつこいな ―― 今の私にはあんたの
 せいで遅刻しそうだって事の方が大問題なのっ」
 
「オッケー、じゃ、キミの行きたいとこまで送る」 
     

 あれよあれよという間に、車の助手席へ押し込まれ
  
  
「ほら、シートベルト締めて」


 絢音は”絶対、関り合いになりたくない!”と、
 心の中で叫んでいた男の運転する車で
 学校まで送ってもらうのでした……。
  

 通常なら、知らない人間の車なんて絶対に
 乗らない。

 しかし、今の状況は違う!

 使えるものは何でも使え!

 学校へ早く行けるならそれに越したことはない!


 車に乗ってから気が付いた。
  
 ココ、下手したら、私のおんぼろアパートよか
 居心地がいいかも……。
  
 でも、この車はドイツの高級車・メルセデス・
 ベンツ。
    
 こんな冴えないおっさんに、こんなマイカーを
 持てるお金があるとは思えない。

 そっかぁ、公用車? きっとそうだ!


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