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夜の影

第12章 愚か者

【翔side】

徐々に意識がはっきりしてきたとはいえ、やっぱり頭の働きが鈍いというか、ぼんやりしていて。

今聞いた話がちゃんと入ってこなかった。



家に帰れる…。

弟と妹と、また一緒に暮らせる…。



サトシは?

サトシとは離れる?



黙ったままのサトシが、どんな顔をしているのか俺には見えない。

起きないと。

サトシ。

サトシ…。

俺、あんたのこと…。



「…トシ…」



痰が絡むみたいになって、上手く声が出ない。

目も開かない。



「サト…シ…?」



無理に目を開けようとしていたら、立っていたサトシが、枕もとに座り込んだ気配がする。

サトシの陰で眩しさが和らいだ。

リビングでソファに寝かされてたのが分かる。

倒れたテーブルは元に戻っていた。

俺が腕を伸ばすとサトシはそれを自分の首にかけて、躰を起こすのを手伝ってくれる。



「ショウ、家に帰れるんだって
良かったな」



声が優しい。

上半身だけ起こして、そのままサトシに抱きついてた。










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