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my destiny

第4章 Pandora's box

【翔side】

智君のメイク時間を出来るだけ遅くしてもらうよう頼みに行って戻ってくると、楽屋にはお客さんが来ていた。
東北出身の二人組の芸人さんだ。

差し入れをくださったので、お礼を言い、掛けていただいて暫くお話しする。

気のせいか、お会いするたびにシルエットが大きくなっているように見えるお二人は、健康関連の話をネタにして、カメラが回っているわけでもないのに笑わせてくれた。

冠番組にゲストで来ていただくこともあるので、寝ている智君以外の4人で応対する。

こういう時の俺たちは、何の打ち合わせもしていないのに、見事に振る舞いが如才ない。
子供時代からこの世界で生きて来た結果、知らず身についてしまったスキルだ。

松本は洗練された威圧感で、相手を柔らかく圧倒する。

二宮はエスプリの効いた返しで、付け入るスキを与えない。

相葉は本当の善人だけが持つ正直さで、相手の警戒心を削ぐ。

そして俺は、スクエアさを前面に出して、相手にも同じ対応を要求する。

実に日本人的、政治的、腹黒的な婉曲な攻撃だが、誰に何と言われても構わない。

守りたいものを守る為には、持っているものは全て使うだけ。


今回来てくださった芸人さんがどう、というのではなく(むしろ腰が低いお二人で恐縮するくらいだ)、俺たちは常日頃から、外部に対して意識的に自分の武器を装備し、それを解くことはない。

5人でいる時は尚更に。

智君が武器を握ろうとしない人だからね。

昔、まだ俺たちが若造だった頃、才能を振りかざさない貴方が矢面に立って、グループに対する屈辱を引き受けてくれたことは数えきれない。

だから、大人になって、それなりに力を蓄えた俺たちが、今度は貴方を守る。

どんな人が相手でも、5人の内4人が如才なくその場の空気をリードしていれば、武器を持とうとしない智君を、外部の攻撃から守れるんじゃないか。

それが、4人の暗黙の了解であり、総意だと俺は思っている。





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