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my destiny

第4章 Pandora's box

【智side】

「アイドルって、やっぱり、
恋愛は許されないものなんですかね?」


空腹が治まってオイラ以外の3人の酔いが回ってきたころ、突然ユーリが言った。


「え、何、師匠はそういう相手が居るんだ?」


翔君が、面白がって(るフリ、だと思う)で訊き返す。


「いえ、そう言うわけではないんですけど…
普通、常識的にはどうなのかな、って
事務所とか、先輩方から見た時に」


言いにくそうに続ける。

ユーリはやっぱり緊張してるのか、小悪魔キャラは出してこなくて、静かに話してるんだけど。

翔君は先輩に媚びるような計算高い後輩が嫌いだから、ユーリのことも冷静に様子を見てる節がある。

何となく良くない空気を感じたオイラは、翔君が何か言う前に返事をしてしまう。


「それぞれでしょ
迷惑かけなきゃいいんじゃない」

「そうですかね…
迷惑をかけない、って
結局無理な気がします」


思い詰めた様子で言うから、場がシーンとしてしまった。


「今、恋愛って言ったけど、
つまりそれは、結婚も視野に入れた
本気のお付き合いってこと?
そういう相手がいるなら、
単なる本人の覚悟の問題だと思うけど」


翔君が静かに言った。
その声が素っ気なく聞こえたんだろう、ユーリは下を向いてしまう。


「すみません、変なこと言って…」


翔君が怒ってるわけじゃないのはオイラとフーちゃんには多分わかったけど、ユーリにはわからないだろうな。

翔君、イラッとはしてるかもしんない。

分かり切ったことを訊くな、って多分思ってる。

俺たちにとっては当たり前でも、ユーリはまだ子供だ。
オイラは内心、ハラハラしてくる。

真剣な相談なら、腹を割って自分をさらけ出さないと、翔君には通じない。

社交辞令的な一般論で返されて、ユーリが見下げられてしまうのがオチだ。

賢いフーちゃんは、黙ってグラスを手に取り、器用に視線を逸らしていた。


「何か困ってるの?」


しょうがなくてオイラ、そう言った。







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