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my destiny

第9章 Scar

【翔side】

嫉妬とか、執着とか、情念とは無縁だったこの人が。
俺が居なくなるのが怖い、って。

夢で魘される程に、怖いって。

やっと。
本当に、俺のところに来てくれた。

「翔君、苦しい…」

「うん…」

「ちょっと、力、抜いて?」

「うん」

腕の力を緩めたら、智君は小さく息を吐いた。
それから一つ大きな深呼吸をして言った。

「あのね、ひ、引くかもしんないけど、言ってもいい?」

「ん?」

「オイラ、翔君に、か、彼女が出来ても、
別れてやれないかも。
しつこくして、きっと、うざい?
うざいかもしんない」

物凄く重大な罪を犯したみたいに、どもりながら。
噛みながら言う。

「…引いた?」

「…引かないよ」

喋ると泣きそうだから、また抱いている背中を撫でて誤魔化す。

「き、嫌いに」

「ならない」

馬鹿だなぁ。
何、言ってるんだよ。
俺を見くびってるでしょ?

「智は、ばか」

「うん」

「それ以上言うと襲うよ?」

智君の体がびくっと揺れた(笑)。



もういっこ、言ってもいい?
って、智君が不安そうに続ける。

安心させたくて、智君を抱いたまま、左右にゆっくりと体を揺らした。

「いいよ、思ってること全部言っちゃいな?」

「…オイラね、宮城の前に記事が出たの
結構引きずってるみたいで…
今度、また、あ、ああいう
ああいうことがあったら…」

「大丈夫」

「翔君の記事が出るかもしんない」

「大丈夫だから、俺のこと信じて」

大丈夫。
一人で背負おうとしないで。











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