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my destiny

第12章 陸奥一之宮

【智side】

時計を見ると丁度10時になったところで。
見下ろす位置にある駐車場には、車がどんどん入ってきてる。

あっちから来るとすぐだったのか。

多分、駐車場もいくつかあるみたいで、オイラ達が車を停めたところよりずっと広い駐車場が見えてるんだけど、そっちがメインみたい。

平日なのに参拝客が坂道をぞろぞろと歩いてきてて、早い時間に来られたのは正解だった。

まぁ、皆神様に会いに来てるんだから、俺達には気がつかないと思うけど。

おでんとか、お土産のお菓子なんかを出してる小さなお店があって、お客さんはまだ誰も居なかったから、外に出てる椅子に座らせてもらう。

「貴方、何にする?」

「俺、あまざけぇ」

「じゃ、俺もあまざけぇ」

ふふっ、すぐオイラの喋り方、真似してからかうんだ。

翔君が買いに行ってくれたから、待ってる間、ぼーっと鳥居を眺めてた。

一度メールチェックしてみたけど、ボンちゃんからの連絡は入ってない。

今日は神社が二か所あったから。
実はさっき行った志波彦神社?で、こっそり自分のこともお願いした。

じーちゃんになっても、翔君と一緒にいられますように、って。

へへっ。

もう、オイラ達おじさんだけどね。

冷静に考えると恥ずい。
てゆか、キモい?

ま、いっか。
バカップル、ってことで。

へへへっ。

顔が笑わないように、ムズムズする唇を我慢してたら、翔君が戻って来た。

「智君、ちょっと、こっち来て」

あ、顔バレしちゃったのかな。

呼ばれたから行ってみると、エプロンをつけたお店の人らしい女性が立ってて、目を真っ赤にして手で鼻と口を覆ってた。

「見せてあげて」

翔君が女性に言うと、彼女は来ていたジャンパーの前を開いて、エプロンをちょっと下げるようにする。

そこに見えたのは、パグの絵だった。

オイラが描いた、パグの…。

「あ…」

びっくりして翔君を見る。

笑って頷いてる。

「大野くん…」

女性はまた手で顔を隠してしまった。
目からボロボロと涙がこぼれてる。

「神様が、大野くんに会わせてくれた…」

凄い。
こんなことってあるの?





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