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my destiny

第12章 陸奥一之宮

【智side】

「あ、ありがとう…」

言って手を差し出すけど、彼女は顔を手で覆っちゃってるから気がつかないみたいで。

「握手してもらってもいいですか?」

翔君がオイラの代わりに彼女に声を掛けてくれた。

あ。

顔を見て思い出した。
京都の時に、よく来てくれてた子だ。

お店の注文口になってる棚のところに、アルミ製の杖が立てかけてあるのが見えて確信した。

「足は大丈夫?」

手を取って訊いたら、また泣いちゃった。

京都の時も、いつも杖をついて来てくれてて。

「個展にも来てくれたの?」

ぶんぶん、って頭が動いて頷いてる。

「こっちに引っ越しして…
もう会えへんと思てたのに…

ウチはこの脚やし
ライブには行かれへんから
嘘みたい、嬉しい」

うぅ~、と泣いちゃったから、オイラまでつられそうで。

でも嬉しくて。

困って翔君を見たら、オイラがつられて泣きそうになってるのに気づいて笑ってる。

凄い。

凄い。





頑張ってきた、なんて、当たり前のことだから言いたくないけど。

頑張ったらご褒美がある、ってほんとなのかも…。

オイラ、許してもらえたの?

許して、もらえたのかな…。







彼女がご馳走してくれたワンカップの甘酒で手を温めながら、翔君と二人で駐車場まで歩いた。

「びっくりしたね」

「…うん、来て良かった、へへっ」

寒くて鼻水が出そうだ。

嘘。

ほんとは泣きそうになったからなんだけど。

何か、じーんとして。
翔君と手を繋ぎたかったけど、外だから我慢する。

「あのさ、ちょっと寄り道してみない?」

「翔君が運転疲れないなら
オイラはいいよ?
どこに行くの?」

「…内緒
着いてからのお楽しみ」

えぇ?って翔君の顔を見たら、目を細くして笑ってた。

触りたいけど触れないから、くっついて歩く。

翔君の手が、オイラの背中に添えられた。

ふふっ。

好きだよ。

大好き。

翔君、好き。

オイラは、翔君と一緒に今日ここに来られたことを、神様に感謝した。




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