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注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第17章 修正型電気けいれん療法*(1)

私が途中覚醒したとき、まだ夜中のようだった。






暗闇のなかで、長時間ベッドが激しく上下左右に揺れた。







『ぎゃあーー。誰かきて。助けて。誰か。地震!地震!逃げなくちゃ!誰か』







助けを求める叫びが、終わらないうちに保護室の電気がついて明るくなった。








『高台に避難しなくちゃ。津波が来ちゃう。おねがい早く拘束を解いて。』







「山口さ〜ん、こんばんは。当直の研修医です。」







看護師さんと一緒に保護室にやって来たドクターは、なんとも呑気だった。






こんな大地震の時に…なぜそんなふうに呑気でいられるの?






「えっと、ここは病院なんですね。それで地震は起こってないんですよ。」







『そんなわけない。そんなわけない。』






「もしかして悪い夢みちゃったのかな?一旦落ち着きましょうか?」






『夢なんかじゃないっ…』






「そうですかぁ。それじゃ精神症状がでたのかもね。とにかく今は夜中の2時なので、静かに寝てもらわないと困るんですよ。だから筋注しますね」





『注射いやっ!私に触れないで!』






「注射いやだね。でも山口さんのことを早く楽にしてあげたいから、やりますよ。」








暴れると手の拘束具が擦れて、余計に痛む。


それでも激しく抗った。








研修医は、私の二の腕をねじ込み、アルコールで消毒し「大人しくてして。針が折れたら危ないですから。」と最後通告してから、垂直に注射針を落とした。








『…いたぁいっ…やだっやだっ。痛いっ』







「薬液が入るからね。ごめんね」





2度目の痛みのあと、解放された。





そして看護師さんも研修医も速やかに片付けを終え、「おやすみなさい」と電気を消して部屋を出ていった。




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