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注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第1章 はじめに

『いらっしゃいませ〜』




「脇坂ですけど、僕が頼んだ花束できてますか?」





『はい。薔薇の花束ですね。こちらになります』






私・山口美優(22)は、この春から大学病院の一角にあるフラワーショップでアルバイトをしている。




店長も仲間たちもいい人ばかりで仕事は楽しい。




それにお店が暇なときには、目の前を通りすぎるイケメンドクターを観賞できるので嬉しい。





「ありがとう。君、とってもセンスがいいんだね」





『ありがとうございます。お気に召されましたか?』





「とっても。だけどそうだな、ピンクの薔薇があと1本あったらもっといいかもしれないな」





『かしこまりました。ピンクの薔薇をすぐにご用意しますのでお待ち下さい』





女性へのプレゼントかしら。

何か特別な日なのかも。





『あっ…いたいっ』






考え事をしていたせいで、ピンク色の薔薇のトゲが指先に刺さってしまった。




「どうしたの?大丈夫?」





後ろから脇坂先生の声がした。




『大丈夫です』




「え、でも大丈夫じゃないよね?」





指先からタラタラと赤い血が流れてた。




私は昔から血が苦手で。




次の瞬間、脳貧血でバタッと床に
倒れ込んでしまった。






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