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注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第46章 眠れる森の美優*(2)

*ICU





真夜中のICUは、急変する患者さんがいない限り静かで、聞こえるのは心肺装置やモニターの規則的な機械音だけだった。






「美優、りんたんが来たぞ。」







久しぶりの対面だった。






以前よりだいぶ痩せ細り、顔はひどく浮腫んでいた。その姿に美優の闘病の苦労のあとが見え、脇坂先生の透析カテーテルを外す判断に初めて納得した。






「連絡が来るまで何も知らなくてごめんな。透析でみるみる元気になってると思ってたんだ。バカだな、僕は…」






自責の念に駆られながら必死で涙を堪えた。







「もうあの愛くるしい笑顔が見られないのは残念だけど、つらい治療は終わりだから天国でゆっくり休んで。お疲れさまでした。」







別れの挨拶を終え、唇に最後の口づけをした。




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