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注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第8章 結果

トントン



「回診です。調子はどうかな?」



『検査のお話しに来たの?』




「検査の結果は出たけど、そのお話は明日の方がいいんじゃないかな。今、お食事中だしね」




『明日…』




「ごはんは食べれてる?」




先生が気まずい雰囲気から抜け出そうと話題を変えた。




「え?ちょっと待って。その醤油、なに?」




食事のトレーのはじっこに置かれた醤油に
先生が噛みついてきた。




『私、東北出身だから薄味は苦手で。売店にお醤油あったから買ってきちゃった』




「売店にお醤油売ってるんだ…?」




『もちろんミニサイズだけどね』




「それでどのおかずにお醤油かけたの?」




『焼き鮭とほうれん草のお浸しときんぴらと』




「きんぴらなんてお醤油かける必要ある?」





『関東の人のことは分からないけど、うちの田舎では当たり前にかけるよ』




「だめだめ。塩分取りすぎだもん。今日からやめよう」




『だけど、先生だって卵焼きや納豆にお醤油かけるでしょ?』




「確かにかける時もあるけど、でも鮭やきんぴらには絶対にかけない。そんなことしてたら高血圧で死んじゃうもん」





『自分で作るより病院食の方が薄味だったからついつい。でもこれからは気を付けるようにするね』





「お医者さんの言うことが聞ける?」






『聞けます』




「お醤油はやめてね。約束だよ」




『約束します』




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