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注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第13章 心理的反応

急いで病室に駆けつけたが、美優ちゃんは眠っていて僕の呼び掛けに反応しなかった。




モニターを確認して聴診器を当てたが
特に問題はなかった。





「目が醒めたらナースコールしてね。脇坂」
と、書いた付箋をテレビの前に貼ってから
部屋を出た。





午前のカンファレンスを終え、病室に行くと
美優ちゃんは座ってテレビを見ていた。




「美優ちゃん、大丈夫だった?トイレで倒れてたって連絡がきた時には心配したんだからね」





『ごめん。でももう大丈夫』





「よかったあ。倒れたこと覚えてる?」






『なんとなく』






「"トイレで倒れてた時に点滴してなかった"って助けてくれた看護師さんが言ってたよ。どうして点滴外しちゃったの?」






『点滴は、あんまり好きじゃないから』






「好きじゃなくても点滴は外しちゃったダメだってば。命を守るための大切なお薬なんだから」







『わかってるけど。点滴やってると病気のことが悲しくなるし自分のことが惨めになるの…』






「もう外さないって約束して。もし約束破ったら次はベッドに両腕を拘束するしかなくなっちゃうんだからね」






『先生は、私の気持ちがわかってない…』







「わかってるよ。病気のこと認めたくないんでしょう」







『認めたくない…』







「認めたくない気持ちと点滴は切り離して考えて。点滴外さないって約束してくれる?」







『…』





「拘束はする方もされる方も辛いだけだからね。約束してくれる?」





私は首を小さく横に振って『しない』と
言った。





「約束してくれないならしょうがない。今日は僕や看護師さんが頻繁に見にくるようにするから」






拘束されない代わりに、穿針部分はテープでぐるぐるに固定されドレッシング剤で保護された。




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