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注射、浣腸、聴診器、お尻ペン。

第13章 心理的反応

夕食時、脇坂先生が回診にきた。




なんで笑顔なんだろう。




私の気持ちをわかってくれないことに
イライラしてしまう。




「こんばんは」




聞こえないふりをしてテレビの音量をあげた。






「美優ちゃん?」





その無神経さに腹が立つ。







『うるさいっ。あんたなんか顔も見たくないっ』









衝動的に食事のトレーを投げつけてしまった。





ご飯もおかずも床に飛び散った。












『何もかも嫌になっちゃったの。透析しなければ死ぬんでしょ?だったら今、死なせて』







「死にたくなるほど辛いことくらい
わかってるよ」





『わかってるなら…』





「今が一番辛い時だと思うんだ」






『…』





「イライラしたり悲しくなったり情緒が不安定なのは、腎臓のホルモンの影響だから透析が始まればすぐに治まる。ついでに泣き虫も治るよ」






『私、泣き虫じゃないもん』






「透析が始まったら今より楽になるから。あとちょっとだよ」







そうだったんだ。

先生は、なんでもお見通しなんだね。







「でももしかしたら泣き虫は治らないかもしれないなぁ〜。治らなかったらごめんね」






『泣き虫じゃないもん』






私はニコリと笑顔をむけた。





「泣いたり笑ったり忙しいね、美優ちゃんは」






『からかわないで。お片付けしなきゃ。先生も手伝って』





「オッケー。一緒にやろうか」






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