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機動戦士ガンダム~サナトリウム~  

第4章 戦火の恋人たち

ジローとナオは貧しいながらも仲睦まじく幸せに暮らしていた。

ふたりとも戦争で街や家を焼かれた不幸な境遇であり、その心の傷を慰めるように愛し合っていた。

しかし、その幸せも長くは続かなかった。

戦争は激しくなり、ジローとナオが住む街にも戦火が及んだ。

戦火の中、たった二人だけ残されたナオの家族である幼い弟や妹はナオの目の前で死んだ。帝国のモビルスーツにやられて墜ちてきた連邦のモビルスーツの巻き添えになって・・

この時からナオは自由や愛を掲げる帝国の理念に共感するようになってジローの元を去って帝国の人になってしまった。

ナオの心変わりの真意は分からぬまま、哀しいことに二人の再会は戦場で敵同士としてであった。

ナオはモビルスーツをさらに進化させた巨大兵器モビルアーマーに乗ってジローのガンダムに立ちはだかった。

モビルアーマーにはもはや人型という制約はなく、ナオのモビルアーマーはまるで花のように美しいが、その見た目とは裏腹に凶悪な戦力を誇った。

「ナオ、やめろ、優しい娘に戻ってくれ」

「ええい、お前はわたしに何を与えてくれた。幼い弟や妹さえ守ってくれなかったお前が言う台詞か」

ナオは戦士としての能力を極限まで引き出すための強化手術を受けていた。強化の副作用は精神を破綻させる。

ガンダムとモビルアーマーは哀しく撃ち合うしかなかった。

ナオの近くには帝国の王子の乗るモビルスーツもいた。王子はカネや貴金属をふんだんに与えて偽りの愛でナオを支配していた。

「王子は約束してくれたさ。弟や妹を生き返らせてくれるって」

帝国はクローン技術で強化人間を造り出す研究も勧めていて、この段階で既に何人かの人工的に造り出されたクローン強化人間が戦場に投下されていた。

それは神に対する、生命に対する冒涜である。

その悪魔の技術を使ってナオの弟や妹をクローン強化人間として誕生させようというのだ。

「ナオは戦いなんてする娘じゃなかった。それを強化したのか!」

「ナオは自由と愛のために戦う女になったのだよ」

ガンダムと王子のモビルスーツはビームサーベルを激しくぶつけ合う。

「人を強化して心を支配して・・生命さえも弄ぶ。それがキサマたちの掲げる自由と愛かあぁっ」

「崇高な理念のためには血や涙、犠牲は不可欠だ。そんなことも知らんのか」

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