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果てなき場 ~ boundless field ~ ①

第1章 反逆

姫は椅子に腰をおろして物想いに沈んでいるようだった.
「姫 あなたの身に危険が迫っています わたしと一緒にきてください エブル公が叛逆しました」
姫は困惑した様子だったがゼルバはお構いなく姫の手をとり馬のところまでくると
「姫 無礼をお許しください」
といって姫を抱き上げ馬にのると自らの邸に向かった.
邸の近くにくると邸はすでに火に包まれていた.
エブル公の兵が火をかけ構えはほとんどなく皆すでに討たれていた.
ゼルバが宮廷へ向かった入れ違いにエブル公の兵に邸は包囲され火をかけられ逃れようとするものは皆殺されたのだった.
〈エブル公はよく知っているな 帝位についたエブルに我が家がけして従うことなどないことを エブル公が帝家を横領して帝位につけば わたしも姫も 寸地も居場所はない 未だ征服されない西蕃の地にはいっても 殺されることにかわりはないだろう 姫が生きられる道はただひとつエブル皇帝の妃になることをうけいれことだけだ わたしには 生きる道などまったくない エブルはわたしのことをよくわかっているだろう たとえ木の根をかじり泥水をすすってもエブルを討とうとすることを〉

ディバイン家の祖となったのは天衣無縫の御子と呼ばれた宮だった.
戦場を駆けること五十数度みに擦り傷すらおうことはなかったとゆう武勇の宮だった.宮の西蕃遠征によって西蕃の国の多くを切り従え帝国の版図に加えた.
兄宮より帝位にふさわしいと宮廷あたりではよく口にされていたが兄宮との関係が悪いとゆうことはなかった.
兄宮は武勇の人ではなかったがもの静かで聡明な御子だった.
あるとき兄宮は弟宮に
「わたしは帝位にはあなたがつくべきだと思っています わたしのことは気にすることはありません」
とおっしゃった.
弟宮はこたえて
「兄うえ長幼の序を違えてはいけません わたしのことを気にかけることはありません」
そのあと直ぐに弟宮は
「帝家も五十代ともなれば 皇族の費えも莫大なり どのみち臣下に降るなら 宮仕えも面倒だし 我が子孫は軍学の家として生計を立てるのが良いだろう」
といって野に降ってしまった.

とにかく一刻も早く帝都を出るべきだとゼルバは判断した.
帝都から十五キロほど離れたところにハイデンの森があり森のなかに狩のときにつかっている山荘がある.
いまはそこへ行くしかなかった.


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