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sweet poison【BL】

第3章 絶望の中の行為

紅茶は赤く、それでいて甘い匂いが濃かった。

一口飲むと、紅茶の香りと甘さが口の中に広がり、体中に染み渡った。

「美味いな、これ」

「良かった。新しいブレンドだから、ちょっと心配だったんだ」

しかし羽月は紙コップを両手で持ったまま、口を付けようとはしない。

「羽月、お前飲まないの…」

「ねぇ、陽一」

陽一の言葉を遮り、羽月は強い声を出した。

「なっ何だ?」

「どうせこのまま戻っても、ボクは父さんの元へ連れてかれる。どんなに足掻いても、ね」

「…向こうの奥さんは、納得しないんじゃないか?」

「しないよ、もちろん。本当は義姉さん達に婿を取らせて、家を継がせたかったみたいだけど、父さんがそれを嫌がっているし」

「親父さん、お前のことが可愛いんじゃ…」

「どうだろうね?」

羽月は肩を竦めた。

「確かに父さんは母さんを愛していたよ? それは知っている。けれど母さんが父さんを愛していたかと言うと、それはちょっと違う気がするけどね」

「…どういうことだよ?」

陽一が尋ねると、羽月はぞっとするような美しい笑みを浮かべた。

「元々契約みたいな関係だったんだよ。母さんの実家が経営する会社が傾いた時、父さんが声をかけてきたんだって。母さんに愛人になれば、会社を立て直してやるって」

「なっ!」

思わず紙コップを落としそうになり、慌てて手に力を込めた。

「だから仕方なく、母さんは愛人になってボクを産んだ。しょうがなかったんだよ」

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