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sweet poison【BL】

第3章 絶望の中の行為

陽一は羽月の母親を思い出した。

羽月と同じく美しい茶色の長い髪をしていて、大きかった琥珀色の瞳も息子と同じだった。

容姿は美しいと言えるのに、穏やかな雰囲気が、側にずっといてほしいと思えてしまう魅力があった。

そんな羽月に惹かれてしまったのは、陽一も同じこと。

悪口なんて言えやしなかった。

「…ごめん」

だから謝るしかない。

「陽一が謝ることなんて何にもないよ。逆にボクの方こそ、陽一に謝らなきゃいけないことがある」

「そっそれもしょうがないことだから、いいよ。それにお前が悪いことじゃない」

「でもきっかけはボクだ」

「羽月…」

「…ごめん。ちょっと卑屈になっているみたい」

羽月は苦しそうに首を横に振った。

陽一はため息をついて、紅茶を飲んだ。

「きっとこのままじゃ、ボクは陽一と会えなくなる」

ぽつりと呟いた羽月の言葉は、陽一も考えていたことだった。

「別に実家に戻されることも、家を継ぐことも苦痛ではない。けれど…陽一と引き離されることだけは絶対にイヤだ!」

激高した羽月の手の中で、紅茶が飛び散った。

まだ熱を持つ赤い液体が、羽月の手や床に零れ落ちる。

「あっ、おい」

慌てて立ち上がった陽一だが、しかし眼を見開き、その場にドサッと倒れた。

「―ああ、やっと効いてきたんだね」

「なあっ、がっ…!」

陽一は自分の体の異変に気づいた。

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