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兄弟ですが、血の繋がりはありません!

第6章 愛を知らない長男は


***

卒業すると彼女との関係は自然消滅した。

俺たちの間には彼女の思う«愛»というものがないからだろうか。それは今でも分からない。

高校に入ってから今に至るまで、彼女はいない。

つまり、俺の彼女は最初の瀧村 明灯だけ。

あの日の言葉がずっと喉の奥に刺さった魚の骨のように引っかかり、痛むから。

今も答えを探している最中。

「智にぃ、手ぇ止まってる」

「ふぁ・・・ごめん」

彼女のことを考えていたら、甘じょっぱく煮た油揚げに酢飯を詰めていたはずの手がどちらも止まってしまっていたようで。

悠に顔を覗き込まれる。

「なに、考えてたの。ずーっと眉間にシワ寄ってるし、途中『べちゃっとしたご飯』って言ってたけど?」

「あれ、声に出てた?」

「完全にね。…俺、もしかして今日のご飯水間違えて炊いちゃった?それとも酢入れすぎた?」

「違うよ、悠のご飯は完璧だよ。ご飯の話は本当にただの独り言。それだけ」

こんな風に考えたのっていつぶりだろう。彼女と離れて、連絡しなくなって暫くは考えていた気がするけど…。

高校に入ると中学の頃よりも周りは恋だなんだと言い始めて。それで。

告白とかされた。

その場の流れっていうか、顔が近づいて来て相手が目を閉じたから、キスもした。

だけど、やっぱり付き合うことは無かった。

高3の時にセックスもしたけど、こんなもんかって。

俺は女の子たちからしたら、最低な男だろうな。

遊びに行って優しくして、キスもセックスもして。だけど、恋人という関係にだけはならない。

怖いんだ。

また、愛を欲しいとせがまれたらと思うと。

それが何かも分からない俺じゃあ、どうしたって与えられない。

「(一体、どうしろっていうんだ・・・)」

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