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兄弟ですが、血の繋がりはありません!

第2章 朝だって時には戦場になる


悠side


「さて、」

我が家の大型台風も去ったことだし。

「兄貴に取り掛かりますか」

洗面所に放置して数十分、そろそろ1時間近く経つ。そっとドアの隙間から中を覗くと、兄その①は一切変わらない体勢でいた。

「ほんと爆睡型はいいよな…」

浅い眠りばかりの人間からしたら、1度寝たら何があっても起きないような兄の寝方は少しばかり羨ましい。

「智にぃ!!起きろ!」

「(すぴすぴ・・・)」

まぁ、流石に声掛けで起きるとは思ってない。
次の手段だ。

俺は智にぃの肩を掴むとグラングラン揺らした。
どうだ!これなら起きざるをえない!

「(すぴすぴ…)ふがっ」

「え、それだけ?」

これだけ揺すって起きないのは、最早恐怖だ。
この人の脳どうなってんの?

次はどうしようか、そう考えた時だった。
グイッと膝裏を押され、後ろへバランスを崩した。そこを今度は腕を掴まれ、前へ引っ張られた。

そんなこと、されるなんて微塵も予想してなかったものだから重量に逆らえず、踏ん張る力さえ出せず。俺は智にぃの胸に思いっきり倒れ込んだ。

「…いって」

「・・・ふふ、ふはっ」

「智にぃ…」

「おはよう、悠」

「おはようじゃねぇわ!危うく洗面台に後頭部強打で死ぬところだったよ!」

「うん。でも、死んでないよ?」

出たよ。智にぃの"違うからよくない?"顔。
そういう問題じゃない。

「あと離せ。男子大学生が男子中学生を膝に乗せて抱きしめている絵面はどこをどう切り取っても有罪」

「ふぁーい」

この長男、これで長男なのである。
世間でいう1番上らしさも、自覚も何も無い。

「あ、待って」

「ん?」

「このアングルの悠描きたいから、ストップ」

そういうと股下から見上げるような体勢で、立つ俺をデッサンし始めた。おい、嘘だろ。

「え、動いていい?」

「待って!まだ半分もいってない!」

「俺はもう限界だよ!」

おまわりさーん!!ここに変人がいます!!!

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