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兄弟ですが、血の繋がりはありません!

第11章 夜のお相手は指名制


悠side

「はぁるぅちゃんっ」

ああ、今日はそんな日か。

階下からする呂律の回っていない長男の声に、1つ溜め息を吐いた。

「ちょっとハルル〜!オレこれから友達の家に泊まりに行くから早く兄さんどうにかしてー!」

さらに今は頼みの綱である鶫くんがテスト期間。

仕方なく、盛り上がって来たところのオンラインゲームを中断して階段を降りた。

***

必死な顔で逃げようとする鶫くんと、へらへら笑いながら鶫くんの腰を掴んで離さない智にぃ。

「はいはい、智にぃ。鶫くん離してあげて。可愛い末っ子の悠ちゃんですよ〜」

「んぅ?・・・悠だぁ…おいで、にいちゃんのここ、」

パッと鶫くんを離すと自分の膝へと俺を呼ぶ。
兄のこの姿を見るのは久しぶりだった。

「じゃあね!ハルル、後よろしくね!」

いそいそとリビングを出ていった鶫くんの背中を見送りながら、俺は智にぃの膝に座った。

「んふふ♪」

嬉しそうに笑う智にぃが後ろから俺を抱きしめる。

苦しいってば。

「ねぇ、智にぃ?」

「ん?」

「これ何が楽しいの。俺もう中学生だよ」

「えっ大きくなったなぁ・・・」

この件もいつものやつ。そう言ってしまうのは簡単だ。けれど兄は毎度毎度、俺の言葉に本当に懐かしさを滲ませた声を出すのだ。

「悠は小さい頃、俺がここに座ると、ぜぇったい膝に座りに来て、小さくて温かくて、」

『大好きだったんだぁ・・・』

消えてしまいそうな智にぃの声を背中に受けながら、「俺もだよ」って言いそうになったのを飲み込んだ。

俺も、智にぃの膝に座って智にぃが描く世界を見るのが大好きだったんだ。

いつもと何1つ変わらないのに、鉛筆を持った途端、智にぃの手は魔法の手になる。

その瞬間を見るのが本当に好きだった。

「今度は、隣で智にぃが絵描いてるとこ、見せてね」

「・・・」

返事がない。まさか。

恐る恐る首を後ろへ回すと、嫌な予感が的中していた。

「ひとの背中で寝てる・・・」

こうなってしまった智にぃは何をしても起きない。ただでさえ寝付きがいいのにアルコールが入ったら手に負えない。

「しょうがないなぁ…」

よっこいせ、と智にぃを負ぶう。
中学生に担がれちゃう成人男性ってどうなの。

また美味しいもの、食べさせなくちゃ。

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