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兄弟ですが、血の繋がりはありません!

第12章 血液はいつかの鉄棒の味がする


それじゃあ、オレの思いはオレ自身が分かっているより悠に届いていたんだ。

悠を守りたい。
悠を大事にしたい。
悠はオレのたった1人の弟。

「悠、悠はオレが思ってたよりずっと大人だ。やりたいことを見つけて行動してる悠を、オレは心から応援するよ」

「仕事、続けてもいいの?」

「もちろん。…夢がない、やりたいことが無いオレに悠の綺麗で長く続く夢を見せてよ」

そうしたらオレは、少しだけ自分が救われるような気がするんだ。悠を通して悠の夢を見る。とても幸せなことなんじゃないだろうか。

「鶫くんやりたいことないの?え、進路は?3年生でしょ?」

「まだ決めてない」

「まだ?!だってもうセンターとかあるんじゃないの?」

「もう、いいよ。オレ疲れちゃった」

そう、疲れちゃった。その表現が1番今のオレに合っているだろう。進路とかセンターとか、全部から離れたい。

「…夢がないなら、夢を与えられる側になってみんなの夢を見たらいいんじゃない?そしたら沢山色んな夢を見られるよ」

「・・・?」

「ほら、例えば学校の先生とか。あとは鶫くん、勉強出来るし努力も出来るからお医者さんとか、どう?」

そうやって必死に、悠が提案してくれるけど。

今のオレは言葉をそのまま受け取ることが困難で。何も言えず、ただその場にしゃがみこんでしまった。

頭の外から悠の声がするのは分かるのに、それななんて言葉なのかどういう意味なのか分からなくて。

「こわい」

あれ、さっきはあんなに晴れやかな気持ちだったのに。すごく怖いんだ。


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