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その恋を残して

第8章 ……ちゃった、ね


 二日ぶりに目覚めた蒼空を、先ずは身体の異変が無いか誠二さんが診察した。熱も下がっていたようだし、特に健康上の問題は認められなかったということだけど、大事をとって更に半日ほど静養することになった。

 とはいえ、流石にベッドで休むことはしなかったけども。

 そうして、時刻が夕刻に差しかかった頃。俺は蒼空に連れられるようにして、屋敷の庭に出る。ようやく二人でゆっくり話せたのは、その時だった。

「もう、平気なの?」

「はい。お蔭様で、すっかり大丈夫ですよ」

 蒼空が静かに微笑するのを見て、俺は次の言葉に迷う。

 話したいことはあって、知りたいことも沢山あった。そして、謝りたいことも……。でも、その全てが同時に、怜未のことを印象づけるものとなってしまう。

 今は蒼空に、まだ怜未のことを語れない気がしている。目の前の蒼空が、まるでとても脆いガラス細工のように、儚く映っていた。

 目を覚ました後、泣きはらした蒼空は、少し落ち着いてからこんな風に言った。


「私……怜未に、心を閉ざしてしまいました……」


 静かな口調だったけれど、とても重い響きだと感じた。もしかしたら、怜未はこのまま――そんな不安が募る。

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