その恋を残して
第9章 エピローグ
「宋史くん――初めて逢った時のこと覚えていますか?」
蒼空が不意に、そんなことを訊ねてきた。
「もちろん。校門にところで、蒼空が車から降りてきて――」
俺はその場面を思い浮かべながら、言おうとするけど――。
「違います」
蒼空はゆっくりと、首を左右に振る。
そして――
「先生に連れられて、私が教室に入ると――宋史くんが、立ち上がって私を見つめていた」
「え――?」
「私たちの恋は、あの時から始まったんです」
「だって……それは……」
「怜未が、私にくれました」
「怜未……が?」
蒼空は俺と向き合うと、黙って両手を握る。
そして、目を閉じて俺の胸に額を当てた。
「怜未は今も、私の中に――そして、私と怜未の恋は一つになった。だから、今は前よりもずっと――宋史くんのことが、好き」
俺も目を閉じて、蒼空の頭に頬をよせる。
そうしていると、俺と蒼空の心が繋がって、今にも怜未の声が聴こえそうな――そんな気がした。
俺と蒼空は、怜未の恋に支えられていると――そう感じる。
俺はこの先も、見つからない答えを探してゆくのだろう。
だけど、俺に微笑みかけてくれる蒼空は、やはり眩しくて。
これからも、守り続けたい――改めて、俺にそう思わせるのだ。
【了】
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