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その恋を残して

第8章 ……ちゃった、ね


 一晩中ついているということは、少なくとも一緒の部屋で寝るということ。当然ながら誠二さんは反対していたけど、それでも蒼空のことを心配する気持ちは同じだ。

 結果、渋々と了承することになり、その複雑な心情がさっきのセリフとなっているのだろう。

 俺だって別に、この状況を喜んでるかといえばそれは誤解で、はっきり言って困惑する気持の方がずっと大きい。

 もちろん蒼空のことは心配なので、快諾してるわけだけども……。

「松名さま。ご自宅の方に、御連絡いたしませんと――」

 沢渡さんが言う。

「あ、じゃあ――」

 それを受けて、俺が携帯を取り出すと――

「どうか、私にさせていただけないでしょうか。これでも一応は、蒼空さまの保護者の立場として」

 神妙な面持ちで、沢渡さんが言った。

 仮にも高校生の男女を一緒に寝かせる(?)――そんなことを進言した自分に、責任を感じているらしい。

 沢渡さんは、本当に生真面目な人だ。俺が自宅の番号を教えると、緊張気味にかしこまって電話をすることになった。

 だけど、話はものの三十秒で終わったらしい。やや拍子抜けしたような顔で、俺のところにやってきている。

「アッサリしてるでしょ。ウチの親って」

 言うと――

「全くですな。いや、これは失礼……大変、寛大なお母様のようで……」

 沢渡さんが珍しく言い淀んだのを見て、俺は密かにほくそ笑んだ。そんなタイミングで、今度は俺の携帯が鳴る。

 母親からのメッセージ――その内容は。


『ガンバってね!』


 なにをだよ! 思わず心の中で、激しめにツッコんでしまう。これを寛大とは、良く言ったものだと思った。

 そんなことは、さておき。この夜を迎えるに当たって俺と蒼空が一番気にかけていることは、当然だけど怜未のことだった。


 果たして、怜未は本当に、現れてくれるのだろうか?

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